「体験を通して」
10月半ば、帰宅して車を降りると金木犀(キンモクセイ)の甘い香りにふわっと包まれます。私が秋の訪れを感じる瞬間でもあります。金木犀は、オレンジ色の可憐な花をつけますが、花自体より、甘くて何となく懐かしい香りのほうが印象的な植物です。その香りにはリラックス効果や安眠効果があるそうで、最近では香水やアロマオイルなどにもよく使われていますね。
また、ある香り(におい)から特定の記憶がよみがえるということがあります。これは、においを感じる「嗅覚」が、5感の中で唯一、脳の記憶をつかさどる部分に直接つながっていくため、においをかぐと記憶やその時の感情が呼び起こされるのだそうです。
現在、ICTの活用が進み、時間や空間を超えて、資料を見たり人とつながったりすることができます。ただ、においや温度のように、メディアでは伝わりにくいものもあります。直接見聞きし、体験したからこそ実感できること、学べることがあるものです。
そういう意味では、2学期前半は、職場体験、文化祭、人権学習現地研修(1・2年)、保育実習(3年)、園小中合同奉仕活動等、体験的な行事や活動が目白押しで、一人ひとりが教室ではできない学びを得た期間でした。特に、冴希祭(文化祭の部)は、その取組過程も含めて生徒の成長につながる行事でした。
生徒の振り返りを読むと、見通しの甘さを反省するもの、合唱が徐々に上達していく過程や、不安やあせりをクラスで協力し乗り越えたことの心地よさを感じたもの、当日地域の方と交流する中で、楽しんでもらえた喜びを感じたものなど、その時々の様々な感情や自分の成長に繋げようとする姿勢が見て取れました。地域の方からも「中学生の合唱、感動した」「各学年のブースが工夫されていて、中学生以上に楽しんだ」というような声もいただき、「来場される方に楽しんでもらいたい」と取り組んできた生徒たちにとって、達成感を味わい、自分たちも笑顔になれる行事となりました。
他の行事も含め、ご参加・ご協力くださった皆様、本当にありがとうございました。少人数の本校にとって、多様な方々と関わる体験は貴重な機会です。体験・交流を通しての気付きや学びが、自分自身のより良い生き方、より良い学校づくり・地域づくりにつながるよう、これからも努めてまいります。